和尚のひとりごとNo1127「法然上人一代記 55」

55.遺跡は諸州に

さらに二日経った正月三日、弟子の一人が上人に尋ねました。
「この度こそ、必ず往生されますでしょうか?」
「私はもと極楽にいた身であるから、きっと極楽へと帰り往くであろう」
とお答えになりました。
さらに高弟の法(ほう)蓮房(れんぼう)信(しん)空(くう)が尋ねます。
「古来より高僧は皆、遺跡(ゆいせき)となる寺を残しています。しかしながら御上人はひとつとしてお寺を建立されていません。御入滅のあとはどちらをもって御遺跡(ごゆいせき)となすべきでしょうか?」
「遺跡を一ヵ所の堂塔に定めれば、皆はそこにお参りしてよしとするだろう。それでは私の勧めた念仏は広まらない事になる。
私の遺跡は諸州つつうらうらに満ち溢れている。何故ならば念仏を興し盛んにすること、それは私が生涯をかけて教え勧めた事であるから。
念仏を修するところ、それは身分の上下に関わりなく、漁師の粗末な小屋であっても、それが私の遺跡となるのである」

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