和尚のひとりごとNo1105「法然上人一代記 34」

34.重衡への授戒

迷いの世界を厭い出家することがままならぬならば、せめて戒を授けて下さいませんか?

南都焼き討ちの張本人であり、その後の一の谷の合戦に敗れて捉われの身となった平重衡の言葉であります。重衡は獄中にて自分の後生について思い悩み法然上人との面会を願いました。これを受けた法然上人は京の都より奈良で出向いて会見に臨みました。

重衡はそこで自らの内面を吐露(とろ)いたします。

「南都の伽藍を焼いたのは私でも父清盛の意志でもありません。南都にもいるであろう良からぬ輩か、私の配下の者の計らいか、いずれにして総大将である私が全ての罪をかぶり償(つぐな)う所存です。出家が出来ぬならどうか戒だけも授けて下さい」

法然上人は形ばかりに剃髪させ、一晩中浄土の荘厳や様々なる法門につき話して聞かせたと言われています。