和尚のひとりごとNo1126「法然上人一代記 54」
54.一枚起請文
そのような上人のお姿をつぶさに見ていたのが門弟の源智上人であります。源智は上人に懇願しました。
「念仏の安心、年来御教戒にあずかりましたが、なおご自筆に肝要のご所在を一筆お書きくださいましたならば、後のお形見に備えたいと存じます」
正月23日のことでありました。このようにして記されたのが『一枚起請文』であります。ここには釈迦・弥陀二尊に偽りなきことが述べられ、浄土宗の安心起(あんじんき)行(ぎょう)の肝要が記されています。
「南無阿弥陀佛と申せば必ず浄土に迎えとられると心から信じて念仏する人は、たとえ釈迦仏一代の御教えをよくよく学んだとしても、自分がそれを一文字たりとも理解できない愚か者であると考えて、ただひたすらに念仏する事だ」
「ただ一向に念仏すべし」これが結論でありました。