和尚のひとりごとNo1111「法然上人一代記 40」

40.顕真の帰浄

 

大衆(たいしゅう)みな同音(どうおん)に念仏を修する事三日三夜、声山谷に満ち、ひびき林野を動かす、信を起こし、縁を結ぶ人多かりき」

これがこの時の大原の様子であったようです。

当初は今までになかった新しい教えを主張して登場する新参の法然上人を、いあわば迎え撃つ心で臨んだであろう諸学の僧たちも、結果的にはその教えの素晴らしさに信服し、その価値を認めざるを得なかったのでありましょう。

天台座主であった顕真はそののち、姨(おば)の禅尼に宛てて消息を送ります。

「一心に専ら念仏を修せば必ず往生が叶うのだ」

ここにはそのように記されていました。

さらに大原の地に五つの堂宇を建立しました。顕密に広く通じた顕真は遁世の道を求めて、余行を捨て一生涯念仏の人となったとも伝えられています。