和尚のひとりごとNo1074「法然上人一代記 4」

和尚のひとりごとNo1074「法然上人一代記 4」
和尚のひとりごとNo1074「法然上人一代記 4」

4.夜討ち(夜中の襲撃)
このように和やかな家庭で何事もなく育っていった勢至丸でしたが、ある日、まるで一陣の嵐ような大変な事件が起きました。
時国夫婦が守る稲岡の庄(いなおかのしょう)の隣の弓削(ゆげ)には、荘園の預所(あずかりどころ)の役職にありました明石源内武者定明(あかしのげんないむしゃさだあきら)という者がおりました。本来は時国とともに荘園の管理を任され、ともに協力して運営する大切な役目を担う二人でしたが、ふとした事から仲たがいしてしまうことになります。お互いその地域を任された主長であり、立場の違いもあったことでしょう。これについては各々が支配する田んぼへ大切な水を引くにあたっての仲たがいであったとか、あるいは、預所の役にあった定明よりも、徳の高い時国の方が村人の人望が篤く、定明はそれを妬むようになったとも伝えられています。
そのような中、ついに恨みをつのらせた定明は、保延七年(一一四一年)の三月十八日、春の嵐が花を散らす夜半に時国の邸宅に攻め込みました。