和尚のひとりごとＮｏ1119「法然上人一代記 47」

47.心は同じ花のうてなぞ

遠く土佐への流罪を言い渡された法然上人でしたが、かつて上人に深く帰依していた九条兼実の計らいにより京により近い讃岐（香川県）に留められたと伝えられています。この地は九条兼実公の治める土地でありました。せめて自領にて引き留めておきたいとの切実なる願いがうかがわれます。
さて九条兼実は京での上人との別れに際し次の様に消息をしたためました。
「ふりすてて　ゆくはわかれの　はしなれど　ふみわたすべきことを　しそとおもふ」
これより長き旅に出る上人とはこれで今生の別れとなってしまうのであろうか。どうか勅免を得て再びこの橋にてお帰り頂けることを願っております。
これに対し法然上人は書き送りました。
「つゆの身はここかしこにて消えぬとも心は同じ花の台(うてな)ぞ」
私たちの命は露のように誠にはかなきものです。しかし念仏を称えれば必ず往生し、極楽の蓮台にて再会を果たすことができましょう」
これが上人のお心でありました。