和尚のひとりごと№1753「浄土宗月訓カレンダー7月の言葉」
和尚のひとりごと№1753「周りを照らす人になろう」
日本仏教の学問所であり修行の聖地であった比叡山延暦寺。開山は伝教大師・最澄(でんきょうだいし・さいちょう<767〜822>)さんです。日本天台宗の総本山ですが、平安・鎌倉時代の御祖師様方は皆、比叡山に登嶺されて仏教を学び、仏道を歩んでいかれました。浄土宗を立てられた法然上人も1146年、十三歳の時に比叡山の西塔北谷に住む持宝房・源光(じほうぼう・げんこう)上人の門を叩かれ、そこで天台の学問を修めていかれました。
天台宗を開かれた最澄さんは、「一隅(いちぐう)を照らす」という言葉を遺されました。これは、『山家学生式(さんげがくしょうしき)』という書物の冒頭で述べられている言葉です。『山家学生式』は天台宗を開くに当たり、人々を幸せへと導く為、「一隅を照らす国宝的人材」を育てたいという想いから最澄さんが書き記され、嵯峨天皇にお納めになられた書物です。
国宝とは何物ぞ (国の宝とは何か)
宝とは道心なり (宝とは、道を修める心である)
道心ある人を名付けて国宝と為す (道心を持っている人こそ国の宝である)
故に古人の曰く (よって昔の人は言った)
径寸十枚、是れ国宝に非ず (直径僅かばかりの金貨十枚、それは国宝ではない)
一隅を照らす (世間の一隅を照らす生活をする)
此れ則ち国宝なりと (その人こそが国の宝であると)
仏教における道心とは、仏の道を歩んでいく事です。一般社会においては、今自分の居る立場と与えられた役割を必要とされているお役目と受け取り、誠実な心で打ち込んでいく事が道心だと言えるでしょう。どんな仕事でも喜びを持って誠実に務め上げ、そこに生きがいを感じる事が大切です。逆にどんな立場におかれても、不平不満を口にするようでは生きがいを感じる事はなく、決して幸せにはなれません。私利私欲ではなく社会の為に自身の力を注いでいく事が大事です。あたかも蝋燭が身を擦り減らして周りを明るくする様に、世間の為に生きる事が仏道です。
各々の与えられた仕事や役割を誠実に務め、世の為、人の為になる道を歩ませていただき、周りを明るく照らす社会の一員として心豊かに生活して参りましょう。