和尚のひとりごと№1512「日中三尊礼 1」

和尚のひとりごと№1512「日中三尊礼 1」

 

元久三年の歳も押し迫った師走の頃、時の鳥羽上皇が熊野臨幸の折、寵愛を受けていた鈴虫、松虫の二人の若い女官が髪を落としました。きっかけは世に専修念仏を広めた法然房源空上人の門下、住蓮と安楽房遵西が東山鹿ケ谷で催した六時念仏に出席した事であったと伝えられています。様々なる風聞のうち、激昂した上皇の命で翌年、二人の僧は斬首されました。この事件は、法然上人が讃岐に配流された承元の法難の直接のきっかけとなったものです。

六時礼讃は天竺の習わしに従って一日を六時に分けて、一昼夜にわたり阿弥陀仏と極楽浄土を称賛する修行です。独特の節回しで、ときに哀切を込めて欣求浄土を訴えるこの礼讃をきき、二人の女官は世の無常を切に感じたのでありましょうか。
これから六時礼讃の中でも最もよく唱えられている日中三尊礼についてご紹介してまいりたいと思います。