和尚のひとりごと№1511「浄土宗月訓カレンダー11月の言葉」

和尚のひとりごと№1511今さらでなく 今から」

 

 「後悔先に立たず」という諺(ことわざ)があります。何かしてしまった後でクヨクヨと悔やんでも、もう既に取り返しのつかない事を意味します。ですから後で悔やまないように事前にしっかりと考え、行動するべきだとの戒めです。しかし、後悔する事は誰しもあるものです。しかも何度もある事です。しっかりと熟考して行動に移したとしても失敗はつきものです。大事なのはその時にしっかりと考えたかどうか。そして失敗して後悔したとしてもその後の行いが大事なのです。何も考えず、同じ失敗を何度も繰り返す人は後悔した意味がありません。全然成長していない事になるからです。後悔しても、次は同じ失敗をしないようにと心を悔い改めた人は、その時点から成長していくのです。

 仏教で悔い改める行為を懺悔(さんげ)と言います。懺(さん)は許しを請う事で、悔(げ)は罪を悔いる意味です。ですから仏教における懺悔の基本は、自らの罪を告白する事と言われます。罪を犯したならば他の修行僧の前で自分の罪を認め告白し、それが相手に聞き入れられる事によって犯した罪は許されるとされます。ですから懺悔は正直になされるべきものであり、ありのままの罪を認め告白する事で成立するのです。

 お経の中に「懺悔偈(さんげげ)」という言葉があります。

 我昔所造諸悪業(がしゃくしょぞうしょあくごう)

 皆由無始貪瞋痴(かいゆむしとんじんち)

 従身語意之所生(じゅうしんごいししょしょう)

 一切我今皆懺悔(いっさいがこんかいさんげ)

 「この私が今だけでなく遠い昔から造ってきた諸々の悪い行為は、全ていつ始まったとも知れない昔からの貪欲(とんよく)<満ち足りる事の出来ない心>と、瞋恚(しんに)<腹立ちの心>と、愚痴(ぐち)<仏様の御教えを知ろうとしない愚かさ>によるもので、それらは身(からだ)と語(ことば)と意(こころ)より生じたものです。その一切を私は今、仏様の御前で告白し悔い改めます。」というのが懺悔偈の意味になります。

 「今さら」とただ単に後悔だけして終わり、悔い改めずに虚しく過ごすのではなく、今、後悔した事をしっかりと反省し、次こそは後悔しない生き方をしていこうと悔い改め、「今から」を何度も何度も繰り返し「今」をしっかりと生ききって参りましょう。