和尚のひとりごと№1432「偈文26」
和尚のひとりごと№1432「偈文26 洪鐘偈」
(意味)
願わくはこの鐘の音が全世界に響きわたり、鉄囲山に取り囲まれた迷いの世界の全ての衆生がそれを耳にして、三悪道の苦しみから離れて、極楽浄土に生を受け、かの地で悟りの境地へと到達できますように
鉄囲とは鉄囲山(てっちせん)のこと。『倶舎論』によれば我々の住む世界の中心にそびえたつ須弥山(しゅみせん)を取り囲むようにして九山八海(くせんはっかい 九つの山脈と八つの大海)があり、その中で最も外側にある鉄の山のこと。鉄囲山に囲まれた世界という意味で、我々の住む世界を表している。
幽暗は煩悩に曇らされ迷いの暗中にある凡夫のあり様を示す。
三途は地獄道、餓鬼道、畜生道と呼ばれる三つの悪しき境涯(三悪道)を指す。
安養は西方極楽浄土のこと。「極楽」の異訳として康僧鎧訳『無量寿経』には「安養仏」や「安養国」という表現がある。
鐘(お寺の梵鐘)を打つ前に十方世界の衆生に法要の始まりを告げること、あるいは日常における時刻の合図として用いられ、この偈文は「鐘を打つ時唱念すべき文」(『諸回向宝鑑』)とされている。