和尚のひとりごと№1419「浄土宗月訓カレンダー8月の言葉」

和尚のひとりごと№1419「涼しさ奏でる鈴の音」

 

 「鐘(かね)が鳴るのか撞木(しゅもく)が鳴るか 鐘と撞木の相(あい)で鳴る」

 撞木とは鐘を鳴らす為の道具です。鐘が有るだけでは音は出ません。また撞木も鐘を叩く事によって音を出せるのです。鐘と撞木、二つ揃って、タイミングが合って音が鳴るのです。音の出る道具や楽器は沢山ありますが、夏の風物詩で挙げると風鈴があります。家の軒下などに吊り下げる小さな鈴です。手の平に収まるくらいの大きさで、金属やガラス製のお椀型をしたものを逆さまにして開口部を下向きに吊り下げます。内側にも紐を吊り下げ、その先に短冊を付けて風を受けやすいようにします。短冊が風を受けて、お椀内の部品が外身に当たって音が出ます。ですから風鈴は叩かなくても風が吹くことによってチリンチリンと涼しい音が響き渡るのです。風が音を奏でてくれるのです。
 冷房の無かった時代、湿気の多い日本の暑い夏を乗り切る為、風鈴の音を聞いて涼しさを醸し出してきました。起源は唐の時代の「風鐸(ふうたく)」だと言われています。風の向きや音の鳴り方によって吉凶を占った「占風鐸(せんふうたく)」とされています。これが日本に仏教と共に伝わり、お堂の四隅などに吊るして“魔除け”として使われました。強い風は流行病や邪気などが災いを運んでくると考えられ、風鐸の音が聞こえる範囲は聖域とし、災いから守ってくれるのだと理解されたのです。
 『法然上人行状絵図(ほうねんしょうにんぎょうぞうえず)』には、「極楽の七重宝樹(しちじゅうほうじゅ)の風のひびきをこひ、八功徳池(はっくどくすい)のなみのおとをおもひて、風鈴を愛して」と記されています。風鈴の音色を聞いて、西方極楽浄土で吹く風を感じ、御浄土へ想いを寄せたのです。御浄土では微風(みふう)が吹き、諸々の宝石のような木々や葉を揺らします。その時に出る音は百千もの楽器を同時に奏でているような素晴らしい音色と言われます。その音を耳に聞くことで佛を想い、教えを学び、教えを学んでいく仲間と共に悟りへと進んでいくことが出来ると説かれています。
 お盆を迎えるにあたり、ご先祖様を想い御浄土に想いを馳せて、共々に信仰を深めさせていただきましょう。