和尚のひとりごとNo1128「法然上人一代記 56」
56.法然上人往生される
病床にありながらも高声にて念仏を相続される上人の目の前には数々の瑞相(ずいそう)が現われたといいます。ある時には観音・勢至の両菩薩さまが出現され、やがて阿弥陀如来さまも上人の前にお姿を表わすようになりました。また法然上人の住房の上に紫雲がたなびき、その中に円形の雲が立ち現れました。
法然上人はこのようにも仰ったと伝えられます。
「今まで言わなかったがこの十余年ほど前から念仏の功徳が実を結んだのか、平生この身にして極楽の様相が仏・菩薩のお姿を拝み奉ることができるようになっていたのだ」
いよいよ臨終の時が近づいていると見た弟子たちは、上人の枕元に須弥壇(しゅみだん)をしつらえ三尺の弥陀仏像を祀りますが、上人はそのさらに向こうより阿弥陀三尊の来迎があったことを弟子たちに伝えました。
最後は慈覚大師が中国より伝来したお袈裟をかけられ、かつてのお釈迦様と同様に頭(ず)北面(ほくめん)西(さい)にてその時を迎えました。往生されたのは建暦二年(一二一二)正月二十五日昼、八十歳でありました。