和尚のひとりごとNo1121「法然上人一代記 49」

49.極楽もかくやあるらん

遊女との邂逅(かいこう)より十日あまりのち、法然上人一行は瀬戸内の塩飽(しあく)本島(ほんじま)に到着されました。かの九条兼実公の荘園にある島であり、この一帯は地頭であった駿河(するが)権守(ごんのかみ)高階(たかしな)(別名 西忍(さいにん)入道(にゅうどう))が治めておりました。西忍は自分が建てた草庵に上人を住まわせもてなしたと伝えられています。
法然上人はもてなしを受け次の様に詠まれました。
「極楽も かくやあるらん あら楽し
                     はや参らばや 南無阿弥陀仏」
皆さまのもてなし有難く、まるで極楽へ来たようです。
                 このような極楽へと参りたいとますます思うようになりました。
                                   南無阿弥陀佛
さて法然上人が到着される以前、西忍は自らの袂(たもと)に満月が入るという不思議な夢を見ました。その後一行が到着されたのを見て、これぞ奇瑞であったと感じたに違いありません。
法然上人は数か月間滞在し、西忍をはじめ村人たちにもお念仏の教えを説き、やがて島中に念仏の声こだまするようになったとも言われています。