和尚のひとりごとNo1101「法然上人一代記 30」

30.非難と迫害

法然上人は吉水の草庵にて自ら念仏を称えながらも、訪れる人々に勧めました。
誰もが弥陀の慈悲により救われる、この教えは、出家して厳格に戒律を守り、修行を積み学問を究めて高い境地に達しなければ悟りを得ることも極楽へ往生する事もできない、あるいは財力を傾けて寺院を建立し寺に喜捨しなければ救われない、といった従来の仏教と比べると実に革新的でありました。
一般の民衆にもその教えの有難さが理解されるとともに、そして法然上人の人柄に惹かれてたくさんの人々が草庵を訪れるようになります。
しかしながらこのような念仏の教えの広がりに対して、旧来の勢力から迫害が起こるようになりました。まずは比叡山延暦寺より次の様に非難されます。
法然の勧める念仏は人を惑わす教えである。
法然は中国へ留学せずに一宗を立てている。
一ヶ寺も建立していない。
天皇から勅許(ちょっきょ)を受けずに勝手に宗派をつくった。
それでも法然上人は念仏の正しさを信じ、確固たる信念のもと念仏と布教を続けました。

吉水草庵の跡(東山安養寺)